一食ブログBlog

急変するアフガニスタン‐現場からの報告。そして平和のための行動

Sep 01, 2021

連日のニュースで、アフガニスタンの情勢変化の報道が、皆様にも届いているかと思います。
一食平和基金では、アフガニスタンにおいてゆめポッケや人材育成事業などの支援を実施しています。
今回のブログは、一食による支援を受けて活動をされている平和村ユナイテッドからいただいた、緊迫した状況にあるアフガニスタンの状況を伝える報告です。

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 一食平和基金のご支援をいただき、「平和にユナイト!パキスタンにおける青少年の地域平和活動とアフガニスタンとの連帯」の活動を実施している平和村ユナイテッドの小野山です。

 当団体では、アフガニスタンでも、「アフガニスタン・ピースアクション!‐平和教育と地域住民による平和の取り組み支援‐」という活動を実施しています。

 このたびのアフガニスタンの急変に接し、皆さまに、現地の状況、そして、今ほど求められているときはない、平和のための行動について、ご報告させていただければと思います。

  • 何もなかったかのように世界が変わった…ジャララバード「制圧」の日

 ささやかながら、小さな幸福を感じていました。アフガニスタン現地で、少しずつでも平和を広げることができているということに、です。当団体は現地パートナー団体とともに、人びと自らが身近な争いごとの解決の事例などについて話し合い、何らかの平和のためのアクションをしていく活動を支援しています。以前は過激な思想を持つ人間の一人だったが、活動を通して変わったと語る人もいましたし、地域の人びとが一緒になって行う活動を通して、争っていたグループが争いを解決したといった事例も出てきていました。現地では、家庭や地域での争いが、武装勢力も含めた大きな争いにつながることもあるのです。

 一方、米軍を含む外国軍の完全撤退を前に戦闘は急速に拡大・激化し、タリバンは国土の多くを支配下に置くようになっていました。私たちが活動を行う東部のナンガルハル州、そして州都であり、拠点都市のジャララバードは、首都カブール以外の最後の拠点といった様相になり、激しい戦闘が起こる可能性はあるのではないかと危惧をしていました。それでも、戦闘や戦闘の犠牲・被害に強く反発する市民の声も戦闘主体には届くようになっている、それが、戦闘を一定程度止めている、という状況も聞いていました。私たちの活動が、そういった動きにもある程度は貢献しているという気持ちもありました。ところが…

 8月15日。その日、朝起きると世界が変わっていました。タリバンが戦わずしてジャララバードを制圧したのだと…状況の変化は、想像をはるかに超えました。

 現地の関係者と連絡を試みた際、通信がうまくいかない関係者もいて、不安も覚えましたが、つながって話をすると、関係者はみな無事だといいます。特に戦闘はなく、町中にはタリバンの戦闘員がみられるともいいます。何もなかったかのような様子が広がっていることに、現実のことではないような気持ちになりました。一方で、この全く一変した世界に、人びとは外に出ず、家にとどまっているようでした。

 その後、首都カブールも含む、アフガニスタンのほぼ全土がタリバンの支配下に入りました。

  • 人びとの様子…そして涙

 8月18日。ある現地の人と話しているときに銃撃が近くで起こっているようだといいます。その後、音が大きくなってきたということで、話を中断することにしました。

 しばらくして、その人がいる場所からは話せる状況になったようで、連絡がありました。銃撃の死傷者の数などは分からないとのことでした。話を再開した後、その人は、この銃撃とはまた別の事件のことを話し始めました。ある事件で、小さな子どもが巻き添えと思われる銃撃で亡くなったのだといいます。

 その人の姿を映していたカメラがふっとそれました…しばらく声も止まり、カメラは人が写らない部屋の片隅を映し出しています。その人は感情をこらえられずに、泣いていました。

 話をしていた時に起こった銃撃については後で報道から知りました。この日は、アフガニスタンの独立記念日の前日で、新たに掲げられたタリバンの旗に抗議し、それまでの国旗を掲げる人びとがおり、デモにも発展、それに対してタリバンが発砲、死傷者が出たものです。タリバンへの抗議デモは首都カブールも含め、ジャララバード以外の地域でも起こっています。

 町の中では女性たちの姿はほとんど見られなくなったようでした。男性たちも、状況の変化に不安を覚え、買い物などもごく近くで済ませるといった状況だそうです。女性の権利侵害への懸念も内外で上がっている中、タリバン側は女性の権利はイスラム法の範囲内で尊重すると述べており、今後が不透明な中、女性たちはほとんど外出をしていないという状況のようです。

  • 懸念される危機と、平和のための行動

 なぜこのように、タリバンが支配を急速に広げたのか、様ざまな報道、分析、憶測があふれています。例えば、米国を中心とする諸外国の軍事介入への反発、市民の犠牲・被害によってさらに膨らんだ反発、比例して膨らんだタリバンへの支持、政府の汚職、その影響も受けた政府治安機構の士気の低さ、これ以上の市民の犠牲を防ぐために地域指導者や政府関係者も戦闘を避ける働きかけや動きを行った…などが言及されています。この間のあまりの急変に、市民の間には、タリバンと米国で何らかの秘密の取引があったのではないかという声すらあるようです。現段階では、混乱が大きく、理由を正確に説明するのは難しいと思います。

 ほぼ全土がタリバンの支配下に入り、戦闘自体はほぼ収まってはいるものの、さらなる危機の可能性も懸念されています。

 反タリバン勢力が結集している地域がまだあります。また、タリバンと国内諸勢力が今後の政権作りを協議していますが、人びとを代表する政府の樹立ができないようであれば、その後の混乱は避けられません。この協議には上記の反タリバン勢力も含まれるべきです。

 人びとによる抗議への発砲なども起こりましたが、人びとの自由な表現、全ての人びとの人権が保障されることがなければ、こうした抗議は、むしろ拡大し、緊迫した事態になりかねません。

 さらに、今後、戦っていたもの同士が同じ社会に暮らしていくようになるわけですが、すでに復讐の事例なども報告されているようで、暴力の連鎖が懸念されます。

 カブール空港では170名以上の方が犠牲になる爆発事件が起こり、「IS」を名乗る勢力による犯行声明も出されています。依然、様ざまな武装勢力が存在しているのです。米国の報復も行われ、暴力の連鎖が懸念されます。

 こうした状況を踏まえ、戦闘と暴力の停止、包括的な人びとの層を含む対話による平和的解決、人びとを代表する政府の樹立、全ての人びとの人権の尊重を強く求めます。また、国際社会には、そのためのあらゆる働きかけを行うこと、同国が忘れられ、孤立し、苦しむことのないよう多様な分野での支援の継続を行うこと、同国での危険から逃れる人びとの支援を行うことを求めます。

  • 平和のための行動-ピースアクション

 冒頭にご紹介いたしましたように、当団体は現地パートナー団体とともに、人びと自らが身近な争いごとの解決の事例などについて話し合い、何らかの平和のためのアクションをしていく活動を支援しています。行われたアクションは例えば、諸勢力が入り乱れる戦闘地で、住民たちにも様々な考え方がある中、一つになって行うスポーツイベントや、植樹の後に平和公園をつくっていく活動、復讐や暴力の連鎖も存在する中、父親が諸勢力の戦闘員や市民の戦争遺児に寄り添い、平和の学びや精神的苦痛の緩和を行う活動、争い解決などに関する本を読んで議論する活動などです。

 これら平和のための活動は、戦争や暴力が繰り返されてきた歴史から、社会全体が変わらないとまた同じことが繰り返されてしまうとの背景から実施しているものです。このことが今ほど当てはまるときはありません。

 そして、一人一人が、そして社会が変わることは可能です。この活動は当団体の現地パートナー団体の代表が、かつては武力を信奉し、銃をとっていたものの、米軍の軍事行動による市民の被害に抗議するNGOの活動に触れ、対話による問題解決に気づき、当事業の原型を開始したところから始まっています。「自分が変わったのだから、みな変わることができる」と彼は語ります。

 アフガニスタンの平和のために、行動を続ける決意です。

 これほどの急変。まさに私たちは、歴史の1ページに立ち合っています。同国が忘れられ、孤立し、苦しむことのないよう、皆さまにも様々な形で、ぜひ、アフガニスタンに寄り添っていただけましたらと思います。

 アフガニスタンの人びととともに、平和を願ってやみません。


真剣なまなざし‐身近にある争いごとの解決などを学び合う活動


女性たち‐身近にある争いごとの解決などを学び合う活動


復讐や暴力の連鎖も存在する中、戦争遺児に寄り添う。失った父親は諸勢力の戦闘員や一般市民


アフガニスタンに平和を。人びとが一つになり、「平和公園」をつくっていく活動。
植樹は、例年、戦闘が激しくなる春に実施。

以上

 

  • 当団体声明「アフガニスタンにおける戦闘と暴力の停止、対話による現状の平和的解決、全ての人びとの人権の尊重を求めます」https://pv-u.org/2021/08/16/1-11/1574/
  • 「日本アフガンNGOネットワーク」(JANN)有志団体による共同声明「アフガニスタンにおける戦闘と暴力の停止、対話による平和的解決、人びとを代表する政府の樹立、全ての人びとの人権の尊重、同国への支援の継続を求めます」https://pv-u.org/2021/08/20/1-12/1577/

 

  • 一般社団法人平和村ユナイテッド

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