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武力抗争の影響を受けた地域で、子どもたちの教育の機会を支える
Aug 04, 2023
一食平和基金と合同事業を実施している特定非営利活動法人ジェンの池田です。合同事業は、紛争や災害で厳しい状況にある方々が、再び普通の暮らしを取り戻そうとする営みを支えることを目的としています。2022年も、世界各地で約171,185人に及ぶ方々を支えさせていただきました。
今回はその中で、一食平和基金のご支援を受け、武力抗争の影響を受けた地域で子どもたちの教育機会を支えさせていただいた事業についてご紹介します。
パキスタンのハイバル・パフトゥンハー(KP)州・クラム県は、アフガニスタンとの国境に面しており、過去6年にわたる武力抗争が、人びとの暮らしに影響を及ぼしている地域のひとつです。教室やトイレ等の衛生設備が破壊され、子どもたちが安心して通学出来る環境が整っていませんでした。また、外壁の無い学校も多くありました。女性が男性の視線にさらされることから守る「パルダ」と呼ばれる文化の下では、学校内部が見えないよう遮る外壁が、女子生徒や保護者にとっての安心に繋がるのです。加えて、衛生教育が普及しておらず、下痢により登校出来ない生徒や、武力抗争の影響から心に不調をきたしてしまった生徒が通学出来なくなるケースもありました。こうした状況を改善し、子どもたちが心身ともに健康に、安心して学校に通うことが出来るよう、ジェンはクラム県で学校インフラの整備と衛生キットの配布、衛生教育、心のケアのための意識教育を実施しました。
サナ・ズフラさんは、クラム県のアリ・シェライ村にあるGGPSアリ・シェライという小学校の生徒です。この村も、過去に宗派間の抗争による影響を受けました。武力衝突が起きている間、村人たちは多大なストレスを受けていたと言います。事業の実施期間中も衝突が起きることがあり、そのときには、サナ・ズフラさんも学校に通うことが怖いと感じたそうです。先生から学校に来るよう励まされ、登校することができ、友人たちに加わることができて、元気になったと言います。
サナ・ズフラさんは学校の様子について、ジェンのスタッフに次のように語ってくれました。「私たちの村は冬になると寒くなります。冬には大雪が降り、厳しい寒さの中、ベランダや空き地で勉強しなければなりませんでした。極寒の中、野外で座っていることは出来なかったので、雪が降ったときや寒さが厳しいときには、学校に来ることが出来ませんでした。ジェンが教室を増設し、教室に家具を設置したことで、私たちはとても快適に過ごせるようになりました。私は衛生キットをもらい、手の洗い方を学びました。自分の石けんを持っていて、毎日歯を磨いています。今は、整備されて綺麗な教室があります。私のふたりのいとこは、両親が野外に座ることを許さず、去年学校を去りました。いとこ達は、とても遠い村の学校に通わざるを得なくなりましたが、今は教室が設置されたので、この学校に戻って来ることが出来ました。」
ジェンのスタッフが新しくなった学校で好きなことを尋ねると、サナ・ズフラさんは次のように答えました。「二つのことが一番好きです。新しい教室には机等の家具が置かれています。座席の配置もとても快適です。以前より快適に授業が受けられるので、精神的にもリラックスしています。次に、自分の衛生キットがあることにとても興奮しています。今、私は自分の衛生と健康に気を配ることができます。」
事業実施前は、以下の写真のように、サナ・ズフラさんの学校の教室は吹きさらしでした。厳しい冬が訪れる地域で、学校の設備が整備されていないことは、子どもたちの教育の機会を奪うことに繋がってしまいます。武力衝突が暮らしを脅かす地域で、学校や衛生設備を改善し、生徒たちが尊厳を持って学ぶことの出来る環境を整えることが出来たのは、一食平和基金によるご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。ジェンは、今後も紛争や災害により厳しい暮らしを強いられた人びとの、心のケアと自立を目指した支援を行ってまいります。