一食ブログBlog

紛争での絶望から生活再建へ:コンゴのジュリエンさんからの手紙

Nov 15, 2025

こんにちは!私はンデケニャ・ンコンゴロ・ジュリエンです。

私は、2017年にコンゴ民主共和国での紛争によって、母親、夫、兄、養子を亡くしました。
それから7人の子どもを連れて、国内避難民としてカナンガ市に逃げてきました。当時収入はなく、そんな時にテラ・ルネッサンスの支援でパイナップルジュース作りの技術を学び、生活を再建することができました。

今も仕事を続けることができていて、家族全員を私が養うほどのお金を稼げるようになりました。日本から支援をしてくださった皆様に心から感謝します。

 
パイナップルジュースづくりの仲間たちと

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一食平和基金の支援を受け、「ディンベレンゲ地域における紛争の影響を受けた脆弱層によるコミュニティレジリエンス向上プロジェクト」を実施した、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの小川真吾です。

コンゴ民主共和国中央カサイ州ディンべレンゲ地域では、2016年以降の紛争により、多くの人々が命や生活基盤を失い、紛争が落ち着いた現在も、貧困と武力衝突のリスクに晒されています。そこで私たちは、紛争の影響を受けた人々、特に女性と子どもたちの命と暮らしを守ること、地元の人々の力で様々な困難とリスクに直面しながらもしなやかに適応するコミュニティのレジリエンス向上を目指し、2024年6月〜1年間、以下の活動を実施しました。

 

持続可能な油ヤシの加工技術・石鹸作りの技術による生計維持支援

脆弱な立場に置かれている90名とその家族約360を対象に、生計維持と向上を目的とした支援を行いました。具体的には、既存の生計手段である油ヤシ加工、石鹸作り、洋裁の技術を高めるための補完研修と商品販売・促進の支援に加え、農作物の生産・販売促進の支援、および小規模ビジネスの促進を行いました。その結果、対象者は複数の収入源を確保し、平均約30ドル/月の所得を得ることができるようになりました。これにより、家族の衣食住に加えて、病気の際の医療費も自身で賄えるようになりました。

 

②過去の支援成果の調査・分析

今後の支援活動に活かすため、これまで支援してきた370名を対象に、過去5年間の生計向上支援による中長期的な成果とインパクトを明らかにするための調査・分析を実施しました。

その結果、以下が分かりました。

・支援開始時点で平均月収8.2ドルと極度の貧困状態にあった対象者の平均所得は、支援後には約9倍に増加。資産(貯蓄、土地、家畜)の保有率も大幅増加

・「生計手段の多様化」「自尊心の高さ」が生計の向上・維持に関連

これらより、脆弱な立場に置かれている人々がレジリエンスを向上するためには、以下が有用であると言えます。

・汎用性の高い能力の向上:生計支援では、特定の技術に限らず収益計算や貯蓄などの汎用的なビジネススキルと、自尊心や困難に挑戦する意欲を育むライフスキルを、長期的に総合的に高めることが重要。成功体験を通じて両方の能力を伸ばすことで、リスクに負けない持続的な生計向上に繋がる。

・自尊心を育む社会的ネットワークの構築:生計維持や自尊心の向上には、「周囲の人々との関係性」が重要。公的支援が乏しい環境では、親族等との相互扶助がセーフティネットとなり、「支える側」として社会に貢献することが自尊心を高める。

・生計を多様化する潜在的なリソース蓄積を促す支援のあり方:レジリエンスの向上には、多様な生計手段だけでなく、試行錯誤で培った緊急時に柔軟に対応できる潜在的な力が不可欠。支援する側は、一見非効率な試みも尊重し、個々の状況に応じたきめ細かな支援が重要。

 
石鹸作りの補完研修の様子


完成した石鹸商品を持つ職員と支援対象者たち