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コミュニティの協力とスタッフの献身

Jun 21, 2023

 一食平和基金のご支援により、「マダガスカル南部ベルーア郡における干ばつによる飢餓に苦しむ住民への医療支援事業」を実施した、AMDA社会開発機構(アムダマインズ)の江橋です。

 経済的、環境的に脆弱な状況にあるマダガスカル共和国の南部地域は2021年、40年に一度というレベルの干ばつに見舞われました。新型コロナウイルス感染症による影響も重なり、困難な生活を余儀なくされた住民に対し、現地NGO「ASOS(アソス)」と連携して巡回診療を行いました。世界で4番目に大きい島、マダガスカルの南端に位置するベルーア郡の70村で、飢餓に苦しむ住民、特に弱者である5歳未満児とその母親、妊産婦ら約1万人に必要とされる医療サービスを提供しました。診療チームにとって、遠隔地の集落を巡回するのは大変なことでしたが、「困難な状況にある人々に医療サービスを必ず届けるんだ」という強い意志のもと、チーム一丸となって取り組むことができました。

巡回診療の様子

 事業実施中、様々な感謝の言葉が私たちの元に寄せられました。その多くは、巡回診療を通して医療サービスへアクセスできたことへの感謝の声でした。それもそのはず。最寄りの保健センターまで往復20キロ以上もの悪路を歩くことは成人でも困難で、ましてや体調の優れない小さな子どもにはとても無理なことです。その上、移動や診療、待ち時間など、保健センターで受診するには時間がかかり、その間は農作業も家事もできません。薬代もかかります。そのため、多くの人が医療サービスは自分には手の届かないものだ、と諦めていたところに、巡回診療を通じた医療サービスの機会が訪れたのです。医療サービスの提供に留まらず、下痢やマラリア、急性呼吸器感染症などの予防方法を伝えたことや、同じ社会的弱者でありながら、女性や子どもが直面する問題の陰に隠れてしまいがちな60歳以上の高齢者を支援したことも、とても喜んでもらえました。人々の喜ぶ顔や感謝の声は、巡回診療チームのメンバーにとって、活動に取り組むための大きな力となりました。
今回、1万人もの多くの人々へ医療サービスを届けることができたのは、コミュニティや、様々な関係者との円滑な協力・信頼関係があってこそのことでした。巡回診療チームのメンバーに南部地域出身者がいたことで保健センターのスタッフや保健ボランティアとの関係構築が進み、巡回診療の日程を確実に地域の人々へ周知することができたほか、ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)や世界保健機関(WHO)、ベルーア郡保健局との良好な関係のおかげで、必要な医療資機材や医薬品を確保することもできました。

予防接種の様子


スタッフや保険ボランティアによる「水と衛生・妊産婦の栄養・呼吸器感染症など」の説明

 一方、活動が終わったいまでも、望まない妊娠やリスクの高い出産に臨まざるを得ない女性がたくさんいます。また、予防接種に必要なすべてのワクチンが、常に保健センターに揃っているわけではありません。こうした家族計画サービスや予防接種の供給問題など、予算や人材不足に起因することが解決するには、まだまだ多くの時間と、国や地方行政の強いイニシアティブが必要なため、少々心残りではあります。
しかし、活動を通じて知った保健ボランティアの存在を、私は心強く思っています。地元住民でもある保健ボランティアは、今後も対象地域で啓発活動などに継続的に取り組むことが期待できます。一般的に、治療より予防の方が容易で、かつ、費用対効果も高いと言われています。医療サービスへのアクセスが困難な現状をすぐに変えることは難しくても、保健ボランティアの活躍によって、少しでも予防行動が広まっていけば、多くの人々が自らの、そして家族の健康を守れるようになるでしょう。
最後になりましたが、日本からのご支援に対し、改めて感謝を申し上げます。アムダマインズは引き続き、マダガスカルのコミュニティと協力し、必要な支援を届けられるよう、取り組みを進めていきます。