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ネパール人保健ボランティアとともに行ったオンラインによる妊産婦への情報提供と相談活動~妊産婦が母国語で自ら情報を得て語れるために~
Jul 14, 2022
一食平和基金のご支援をいただき、「保健ボランティアと協働で行う外国人母子に対する保健サービス情報提供と相談支援事業」を実施している、シェア=国際保健協力市民の会の在日外国人支援事業担当の山本裕子と申します。ご支援に心より感謝申し上げます。
〇活動の概要
日本の外国人人口でネパール人は6位となり、杉並区や周辺地域には、ネパール人学校の存在も影響し、ネパール人夫婦や家族が数多く住んでいます。杉並区においては、外国人妊婦のうち一番多いのがネパール人妊婦で、滞在歴が短く日本語が話せない時期に妊娠することも多く、日本語が妻より話せる夫が保健センターなどで手続きや面接に対応しています。そのため、妻(妊婦)自身が必要な情報を得られにくく、妊婦や乳幼児健診の未受診などにつながりやすい状況です。 当会は、東京都杉並区と周辺地域に居住するネパール人を中心とする外国人母子が安心して保健医療サービスを受けられるように2016年から活動を開始しました。今回は、2021年度に一食平和基金にご支援を受けて実施した活動の中から、ネパール人保健ボランティアと共に実施した“妊産婦へのオンラインでの情報提供・相談対応”の活動と保健ボランティア対象に行った勉強会についてご報告いたします。
〇妊産婦が母国語で相談できるオンラインでの情報提供・相談活動
“妊産婦へのオンラインでの情報提供・相談対応”は、Zoomなどで妊産婦とつながり、保健ボランティアから、母子保健サービスや妊娠中・出産後に行う手続きの説明をした後、妊産婦からの質問や相談に対応します。母国語で相談できる環境なので、「妊娠前から9㎏体重が増えたので気になっている。」「本に、下腹を温めるように書いてあったが、どういうことか。」など、妊婦が心配している身体の変化やケアの相談に対応することができました。専門的な相談は、当会スタッフの助産師が、医療通訳を介して対応しました。
また、この活動では、手続きの詳細や受けられる支援やサービスの相談もよく寄せられ、「書類を書いたが病院で出産育児一時金の手続きをしてくれるのか。」「産後に週1回、自宅で沐浴等の支援を受けられると聞いたが、その内容は自治体によって違うのか。」などの相談に対応しました。第1子出産時は日本語を理解できず1回しか乳幼児健診を受けられなかったという第2子出産直後の母親から、「(参加予定の)4か月児健診以降の健診の案内はどのようにくるのか」と質問があり、日本で2回出産を経験していてもまだまだ情報が不足していることが分かりました。外国人妊産婦が2回目以降の出産であっても、“外国人は日本の母子保健サービスを知らない”という前提を忘れず、適切に情報提供が行われること、そのためにも医療機関や保健センターでの医療通訳活用が促進されることの重要性を改めて実感しました。
〇妊産婦への情報提供に加えたい重要な発見が得られた勉強会
年々、保健ボランティアが妊産婦や母親から受ける相談には、発達の遅れや発育上の問題がある子どもの相談が含まれるようになりました。保健ボランティアとしても赤ちゃんの発達の流れを理解したいという思いから、杉並区の保健師に講師をお願いし、勉強会を開催しました。
今回の勉強会で、保健ボランティアが最も重要な学びと感じたのは、“母子健康手帳には、子どもの発達の状況を母親(保護者)が記録できる欄が設けられている”ということでした。この欄は、生後1か月から定期的に受ける各回の乳幼児健診の前に書くように設定されています。この欄を保護者自ら記録しておくことにより、乳幼児健診などの際に、発達の遅れがいつごろから起きているのか、などの評価につながるそうです。保健ボランティアにとって、母子健康手帳は保健医療従事者が記録する印象が強かったため、新しい発見となり、この情報を妊産婦に必ず伝えるようになりました。
〇妊婦からの激励を受けて、今後の活動へ気持ちを新たに
“妊産婦へのオンラインでの情報提供・相談対応”でつながった第2子妊娠中の女性は、「ネパールから来たばかりで何も分からない妊娠中の友達が2人いるが、日本語ができなくて、一緒に来て欲しいと言われて眼科とかに連れて行った。」と話し、言葉の支援が得られず困っているネパール人妊婦の存在を話してくれました。加えて、「今日の説明は、お母さんが教えてくれる感じで、親しみを感じとても良かったので、他の人にも説明をしてほしい。」と、この活動の必要性を訴えてくれました。私たちの活動は発展途上ですが、このように激励してくれるネパール人の妊婦さんやお母さんたちとも連携しながら、日本で妊娠・出産を迎える女性たちが健康で安全な出産・育児ができるように活動を続けてまいります。これからも、応援、ご支援を何卒よろしくお願いいたします。