ロヒンギャ危機について
Nov 27, 2021
一食平和基金では、皆様からのご協力のお陰様で、難民支援を継続しております。今回のブログでは、国連UNHCR協会よりいただいたご報告をお届けします。
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ロヒンギャ危機について
86万人 バングラデシュへ避難しているロヒンギャ難民の数
44万人 避難した人々のうち18歳未満の子どもの人数
9万世帯 ガスや調理器具の支援を受けている世帯数
(2021年10月時点)
ミャンマーのラカイン州北部で起きた暴力行為により、2017年8月以降多くのロヒンギャの人々がバングラデシュへと逃れ、未曽有の人道危機となったロヒンギャ難民危機。近年で最速・最大規模の難民危機となったこの状況で逃れてきた人の半数以上は、女性と18歳未満の子どもたちです。現在、バングラデシュのコックスバザール地域にある難民キャンプで、86万人以上のロヒンギャ難民が不安定な仮設住居で密集して生活をしています。また難民キャンプで配給される食料は最低限のものに限られているため、いまだ5歳未満の子どもの10%以上が栄養失調状態にあります。毎年モンスーンの時期には、地盤の緩い難民キャンプで生活するロヒンギャ難民の仮設住居は水につかり、洪水や地すべりなど甚大な被害がおきています。また難民キャンプにおいても新型コロナウイルスの感染が確認されており、予断を許さない状況です。
大勢のロヒンギャの人々がバングラデッシュに逃れた翌年の2018年から毎年、国連UNHCR協会は一食平和基金のご支援を受けて、今年もロヒンギャ難民のために次のような援助活動を実施させていただいています。
【バングラデシュにおけるUNHCRの主な援助活動】
〇インフラの整備
夜のクトゥパロン難民キャンプでは街灯が道路や歩道を照らす
キャンプに設置されたソーラーパネル
難民を安全に収容できるサイトを開発するために、UNHCRとパートナーは政府を支援しています。これには、道路とインフラへの資金提供、井戸の建設、衛生設備の改善、モンスーンの天候に対処する難民の避難所の強化が含まれます。 2019年以降、道路、歩道、橋など、200キロメートルを超えるインフラが建設されています。このインフラで特筆すべき点は、新しく建設された太陽光ミニグリッドを動力源とする街路灯の設置です。街灯の柔らかな輝きは、雲ひとつない夜空のもとで唯一の光源を提供します。安全で持続可能なエネルギーの利用は、生活を変えることができます。 UNHCRによって維持されている2500基の街灯により、人々は太陽が沈んだ後も生活ができ、夜間、特に女性と少女がキャンプ内を安全に移動できるようになりました。
〇モンスーン豪雨対策
例年6月から10月頃まで難民キャンプはモンスーンの激しい嵐に見舞われます。難民を自然災害のリスクから守るため、UNHCRは緊急対応を急ピッチで進めています。 雨季に向けてUNHCRはパートナー団体と共に、洪水などが起きた際に対応できるよう排水設備や水関連のインフラの点検・拡充を行い、また地滑りの危険がある斜面の土地の整地作業のほか、歩道や階段、橋の修繕や補強作業などを優先的に進めています。 またシェルターへの対応として、ロヒンギャ難民にモンスーン対策キットを配布するほか、豪雨に耐えられるようにシェルターの修繕や新設も積極的に行っており、最近では洪水に強い鉄骨式シェルターの導入も行っています。2021年7月末には豪雨で約1万2000人が被災、6人が亡くなりました。
コックスバザールでモンスーン時期にみられる暴風雨と濁流
モンスーン対策キットを使って、暴風雨に備えてシェルターを補強するロヒンギャ難民
〇新型コロナウイルス対策
UNHCRは新型コロナウイルス対策で3000人以上の難民ボランティアを訓練、咳エチケットや手洗い方法など、馴染みのなかった感染症予防の正しい知識の普及にも取り組んでいます。また、十分に医療が行き届いていないこの地域で難民と地元バングラデシュ地元民の両方の役に立つ隔離・治療施設を新たに建設、病院のICUの設備強化も行い、この地の医療サービスの向上に寄与しています。そして、バングラデシュの国民の方々と同様にロヒンギャ難民もワクチンを接種できるよう、バングラデシュ政府と協力しています。
石けんで手洗いをする子ども。キャンプでは、感染症対策の正しい知識をロヒンギャ語で伝えている
〇教育支援
バングラデシュに住むロヒンギャ難民の半数以上が18歳未満の子どもです。UNHCRは学習スペースの設置や教師の雇用などを行い、子ども達が教育を受けられるよう取り組んでいます。学校に通ったことのない子どもも多く、識字率も低いと推定されます。特に教育を受けられない女児が多いため、UNHCRは啓発活動にも取り組んでいます。
昨年、バングラデシュ政府から、ミャンマーで使われているカリキュラムおよび教材を使って教育を行う許可が下り、その開始に向けて準備してきました。しかしその矢先、新型コロナウイルスのために学びの場は一律閉鎖になり、ミャンマーのカリキュラムの導入はおろか、学習の場を確保することもできませんでした。家庭学習をサポートするための支援も行いましたが、難民のほとんどが字を読むことができないので、家での学習には限界があります。ミャンマーでロヒンギャの方たちが暮らしていたラカイン州では、人々は移動を制限され、教育を受ける機会を奪われてきたのです。キャンプ内の学びの場がなくなり、児童労働や児童婚、虐待などの報告も増えました。一刻も早く教育プログラムを再開し、ミャンマーのカリキュラムを確実に提供できるような支援体制を整えていかなければなりません。
一時学習センターで学ぶロヒンギャの少女
引き続き難民へのご理解とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。
https://www.japanforunhcr.org/about-us
※年齢などは取材当時の物です