一食ブログBlog

日本に逃れた難民への理解と、支える人材の広がりを目指した取り組み

Jun 13, 2023

一食平和基金の支援を受け、「国内難民支援に関する理解促進のための情報発信、人材育成、難民の社会統合に向けた支援」事業を実施している難民支援協会(JAR)の吉山昌です。皆さまからは長年ご支援を受け、今日を迎えることができました。厚くお礼申し上げます。

 
〇事業の概要  紛争や人権侵害等により故郷を追われた方々が2022年半ばに世界で1億人を超えたことが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から発表されています。昨年から今年にかけても、日本でも報道されるミャンマー、アフガニスタン、ウクライナやスーダンをはじめとする各国で紛争や迫害、人権侵害が続き、難民が増加し続けました。

しかし日本は難民条約の当事国であるにも関わらず難民認定数が非常に少なく、難民として保護すべき人を保護できていません。日本の難民認定が国際基準とかけ離れて厳しく、難民にとってフェアな手続きとなっていないことなどの問題があり、2022年は日本での難民認定数は202人(ただしその大半はアフガニスタンからの難民で特例的な対応)、一方で不認定は約1万人とあまりに狭き門となっています。
その結果、日本に逃れてきた難民の方々の多くが難民として保護されず、先行きの見えない不安な状況で困難な生活を余儀なくされています。

JARではこのような難民の方一人ひとりに対し、医食住の支援や法的な相談に対応し、必要な支援にできる限りつなげる活動を続けています。昨年秋の入国制限緩和以降は、当会に来られる難民の方々も大変多くなり、1日に30人から40人の方をお迎えすることもあります。
そしてこのような環境を変えるため、制度の変革とともに、社会に対しての難民受け入れへの理解と共感の輪を広げるための活動を行っています。
本年、入管法改正案として、難民申請者の送還を可能にするなど、難民保護に逆行する制度が国会で審議され、可決されてしまいました。しかしここで立ち止まることなく、今後も支援現場の声を届け、難民保護のための制度を求めていきます。

本事業はこの理解と共感の輪を広げる活動の一環であり、難民に関する情報発信を行い、難民支援に関わる人々を育てる人材育成を目的とした取り組みを行っています。
 
〇活動紹介1:オンラインでの情報発信

難民に関する情報発信において、本事業では様々な取り組みを行っていますが、特に力を入れているのが、ウェブサイトやSNSでの情報発信です。
ウクライナからの難民受け入れなど、難民問題について耳にする機会が繰り返し起きていますが、そのような時にさらに詳しい情報を知り、ご自身としての関わり方を考えてくださる方が多くいます。そのような方に対して、わかりやすく情報をお伝えするべくウェブサイトに記事を随時掲載しています。

例えば、難民が送還されるとはどのようなことであるのか、具体例やインタビューを交えた記事があり、本年最新の情報も交えつつ、よりわかりやすく構成し直して公開しました。特に多くの方のアクセスがあるのか、日本の難民認定の問題点を解説している記事「日本の難民認定はなぜ少ないか?」であり、2022年度はのべ4.7万回のアクセスがありました。
また、当会に来訪される難民の方々の状況や当会の活動をお伝えする記事も定期的に公開しています。この冬は、当会に来訪される難民が急増している状況をお伝えしました。
ぜひ、当会のウェブサイトにアクセスいただき、「JARニュース」をご覧いただければ幸いです。

SNSでは特にツイッターとインスタグラムに力を入れています。継続的に、日本での状況に加えて、各国での難民受け入れに関する情報もお伝えして市民の関心に応えていますが、今年3月以降は、ツイッターを通じて入管法改正案の問題点を広く伝えることに注力しました。当会が法案の問題点を示す言葉として提起した「#難民の送還ではなく保護を」は、多くの方のツイートで見られるようになり、「祖国を追われた人たちが、日本で再び絶望の淵に立たされることなく、少しでも希望を見出すことができますように。」「もしも自分や家族が難民になったら…と、考えると日本はどんな国であったらよいのか。」「入管に移民難民に対する非人道的な対応を止め、心ある支援を強く求めます!」など、多様な賛同のメッセージを多くの方からいただきました。
法案は問題点が改善されず可決となりましたが、今後も支援現場からの情報提供と問題提起としての役割を果たしていきたいと考えています。

ツイッターと連動した入管法改正案へのキャンペーンページ

 
〇活動紹介2:Meal for Refugees

本事業では、難民支援に関わる人材を育てることも目的としています。その重要な事業として、大学生を中心としたMeal for Refugees(M4R)の取り組みがあります。
当会では日本に逃れてきた難民の方々に日本で作っている料理を教えていただき「海を渡った故郷の味」という書籍を発行しています。学生食堂などでこの書籍のレシピを再現した料理を提供し、難民問題についての認知を広げるとともに難民支援の寄付にも繋げるという取り組みがM4Rで、2013年依頼、全国の学生が自ら運営する取り組みとして広がってきました。
コロナ禍により学生がキャンパスにアクセスできなくなり、食堂が閉鎖されたことは、M4Rの活動に大きな影響を与えました。2021年度には、食堂での実施大学が4校にまで減っていました。
しかし、2022年度にはこの状況からの回復を進め、11校で実施することができました。
この活動に参加した学生は、「難民と共に生きられる社会に向けて何かアクションを起こしたいと考えている人に、活動の選択肢を与えることができたことは、私にとっても貴重な機会となりました。」と振り返っていました。

この活動は、実施に関わる学生だけでなく、料理を通じて難民問題に触れる学生にも影響します。同年度には約1万1千食を提供しています。2023年度も新たな大学での実施も予定されており、今後の展開に向けて、学生の皆さんとともに引き続き取り組みます。

大学でのM4Rメニューの一例

 

〇活動紹介3:「DAN DAN RUN チャリティラン&ウォーク」の開催

学生だけでなく、社会人のボランティアの取り組みにも力を入れています。DAN DAN RUNチャリティラン&ウォークは、社会人を中心としたボランティアによる実行委員会が主催したチャリティイベントです。
2022年5月にはコロナ禍を乗り越え3年ぶりの開催を実現し、その後秋から約30名の実行委員が夜間や週末などに集まって準備を重ねてきました。当会では運営を支援するとともに、難民問題についての情報提供・発信の協力を行っています。
2023年も5月にイベントを開催し、約300名の参加を得ることができました。

実行委員の方々により、どうやって難民問題を伝えるか様々な検討がされ、実施当日のため、難民の方や支援団体、弁護士へのインタビュー映像をオンラインで配信、会場ではライブトークを行うなどして、参加者への発信が工夫されました.
当会にとっても、様々な工夫は参考になることが多く、この取り組みは人材を生み出し、また情報を発信する機会として、継続して実施していきます。

2023年5月開催時のDAN DAN RUNの様子