食糧と共に、安心と笑顔を
Mar 30, 2022
一食平和基金の支援を受け、「アフガニスタン ナンガルハル県における緊急食糧配布事業」を実施しているジェンの松浦です。事業の様子や裨益者の方々の声をご報告いたします。
アフガニスタンでは昨年8月の政変後、政府が保有していた国外口座が凍結されたため、国内に現金が不足し、銀行からの引出しが制限される事態となりました。各国の銀行も、アフガニスタンへの送金がタリバンに科されている制裁に違反することを恐れ、国際銀行送金はほぼ不可能となりました。アフガニスタンでは今までも多くの人びとが厳しい状況に置かれていましたが、実質的な資金の流れが極端に制限されたため、国民の半分以上が深刻な飢えに直面すると予測されるほどの緊急事態となりました。
児童労働や道端で施しを求める人びとの姿が目に見えて増えました。極端な飢えに直面し、家族が生き延びるために子どもを売るという決断をしなければならない人びとまで出てきました。このような状況を受け、ジェンは厳しい状況に置かれた人びとに2か月分の食糧を配布、更に衛生教育を通じて基本的な衛生知識と新型コロナの予防方法を身に着けていただくという事業を実施することを決定しました。
必要とされる支援を、必要とされる人へ確実に届けるために、多くの関係者と密に連携・調整し、食糧配布の当日を迎えました。しかしそこでは、予想外の展開が待っていたと、ジェンのアフガニスタン事務所長代行は言います。
「食糧配布を受ける人びとが密にならないように、ソーシャルディスタンスを保てる、学校の敷地を配布会場として確保し、校長先生から使用許可を得ていました。しかし配布当日の朝、学校を訪ねると、『学校への物資提供が含まれていないのであれば、敷地の使用は許可できません』と言われてしまいました。事前に準備した配布物には、学校専用の物資が含まれていなかったため、大急ぎで代わりの会場を探すことになりました。」
幸い近くに会場を確保することができましたが、既に1回目の物資配布の時間になってしまっていました。会場に運び込まなければならない食糧は、まだトラックの荷台に積まれたままです。混雑を避けるため、そして新型コロナ予防策として、密にならないように計画していましたが、このままでは多くの人が集ってしまいます。そこで、ジェンのスタッフも、食糧を準備してくれた業者さんも総出で、休憩も取らずに物資を会場に運び込みました。その結果、大きな混乱もなく裨益者の方々に食糧を届けることができました。
アフガニスタン事務所長代行(中央)を含む、スタッフ総出で物資を配布会場に運び込みます。
食糧配布を受けた裨益者のおひとりは、日本の支援者の方々のあたたかい思いの詰まった食糧パッケージを受取ることができ、本当にうれしいと言い、このように話してくださいました。「私たちを支援してくれた方々に感謝し、神がいつもみなさんを助けてくれることを祈ります。私はマドラサ(宗教学校)の教師でもありますが、実はこちらも支援が必要な状況です。更には現状を打開するための持続的な解決策として、工場の設置等の生計手段を提供いただけるよう、国際社会や政府に呼びかけたいと思います。」
「家族が待っているので」と足早に会場を後にした男性とその娘さん。
また、他の方はこのようにおっしゃいました。「私たちが受け取ることのできた食糧パッケージには、米、小麦、豆、油、砂糖、お茶など、日々の生活に欠かせないものが含まれています。私たちが本当に必要としているものを配布してくださり、嬉しく思います。家族も私が食糧パッケージを持って帰るのを心待ちにしています。」
「食糧を受取ることができて本当に安心しました」と笑顔を見せてくださったご家族。
写真のホッとしたような笑顔からもお分かりいただけるかと思いますが、みなさまのご支援が、厳しい状況におかれた人びとに、食糧だけではなく、大きな安心をももたらしたことを、私たちも実感することができました。このような活動を可能にしてくださったみなさまのご支援に、ジェンのスタッフを代表し、改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。ジェンはこれからモニタリングを実施し、配布した食料が裨益者の方々に満足いただけているか、ニーズを満たせているかを確認していきます。
最近お父さんを亡くし辛い日々を送っていた男の子も、笑顔を見せてくれました。