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子どもの栄養改善事業の報告とガザの現状・緊急支援について

Mar 30, 2024

一食平和基金と合同で、「パレスチナ・ガザ地区における子どもの栄養失調予防と改善事業」を実施してきました日本国際ボランティアセンター(JVC)の小林です。

日本でも連日報道されていますが、昨年10月7日にパレスチナ・ガザ地区の統治当局であるハマースによる奇襲攻撃から始まったイスラエル軍とパレスチナ側の武装組織との戦闘は今も続いており、すでに半年が経とうとしています。強大な軍事力を持つイスラエル軍によるガザ全土への空爆と地上侵攻の結果、31,900人以上が死亡し、74,000人以上が負傷(3月21日時点)、ガザの人口の約80%にのぼる170万人以上が避難を余儀なくされています。このような中、子どもの栄養改善事業を行っていたガザ中部からは多くの人々が避難しており、活動を中断せざるを得ない状況になっています。

今回の紛争勃発以前から、パレスチナはイスラエルの厳しい占領下にあり、ガザ地区は2007年から陸・海・空を完全に封鎖され、人や物資の移動が厳しく制限されてきました。また、数年ごとにイスラエルから大規模な空爆を受け、水道や電気などのインフラが破壊され、復旧は追いつかないまま停電が常態化するなど、人々は過酷な環境下での生活を強いられてきました。

封鎖の影響で経済状況は悪化の一途をたどり、失業率は45%、人口の80%がなんらかの支援を必要としている状況でした。このような経済状態により、栄養失調に陥る妊産婦や子どもが少なくないため、予防の観点から栄養等に関する子育ての知識を広めること、医療サービスにアクセスできる仕組み作りを広めることを目的として活動を行ってきました。

昨年4月から開始した活動は、約半年で中止せざるを得ない状況になってしまいましたが、現地パートナー団体アルデルインサーン(AEI)のスタッフと、地域保健を推進するボランティア女性たちによって、806名の5歳以下の子どもたちに健康診断を実施することができました。そのうち220名が栄養失調やそれに付随する症状があり、175名は治療が必要と診断されたため、こうした子どもたちへの定期健診や医療機関への紹介などを行いました。

 

健診を受けるラミームちゃん(2023年7月)

 写真は、健診を受けたうちの一人、ラミームちゃん(6か月)です。お母さんはまだ17歳でラミームちゃんが一人目のお子さんのため、離乳食の始め方などについてアドバイスをすると、安心した表情を見せていました。また、お母さんたち向けに講習会や個別のカウンセリングも実施し、のべ384人が調理実習を含む栄養講習、身近な材料を使ったおもちゃ作りの講習、子育てに関する講習に参加しました。

母親向け調理講習会でデーツを使ったプリンを試食する親子(2023年8月)

このような活動を行ってきましたが、今、支援してきたお母さんたち、お子さんたち一人一人がどのような状況にいるのか把握するのはとても難しい状況です。現地パートナー団体のスタッフについては、通信が断続的に遮断されるなか時折つながるSNS等を通じて安否を確認していますが、数日間連絡がとれないこともあります。

現在のガザの状況ですが、イスラエル軍による空爆や地上侵攻がガザ北部から南下しながら拡大する過程で、ガザの全人口約220万人のうち140万人がエジプトと国境を接する最南部のラファに避難しています。ガザ北部では約30万人が今も身動きが取れなくなっており、イスラエル軍による検問や封鎖により人道支援がほとんど入らない状況が続いていて、飢きんが差し迫っています。

また、ガザ地区の全人口が危機的またはそれ以上のレベルの深刻な飢餓に直面(世界食糧計画:WFP)しており、栄養失調による死者も報告されています。避難した人々は劣悪な衛生環境での生活を強いられ、国連の報告によれば、避難所で利用できる水は一人当たり一日たった2リットル、トイレの数も著しく不足しており341人に1つのみです。

少しでも早く、より多くの人道支援が必要ですが、イスラエル側の検問所の一時的な閉鎖や検問の遅れ・妨害により、最低でも1日トラック300台は必要と言われる物資は、2月は1日平均80台弱しか入っていません。空からの物資投下が行われ、海上輸送案も出されていますが、物資の量に限界があるため、食糧を輸送し飢饉を回避するために、道路ルートが唯一の選択肢と言われています。しかし、停戦によって安全なルートや援助関係者の安全を確保しない限り、十分な人道支援の実施は不可能です。

ラファの街中の様子。魚の缶詰が売られている(2024年1月)

JVCは、日本政府に対して、恒久的停戦のためのあらゆる外交努力と当事者双方への強い働きかけを求め、アドボカシー活動を続けています。また、紛争開始直後から情報収集を開始し、緊急支援を進めています。野菜や果物はほとんど手に入らず、粉ミルク、毛布を含め生活必需品の価格が高騰し、10倍にも値上がりしているものもあるため、子どもの栄養改善事業に関わってきたボランティアの100世帯を対象に現金給付を行っています。今後も支援対象を拡大して現金給付を行うほか、粉ミルク支援なども検討しています。

現地パートナー団体アルデルインサーンの小児科医、アドナン医師は持病のためエジプトに退避しましたが、「40年以上小児科医としていろいろなケースを見てきたが、これまでに想像したこともないことが起きている。一切の誇張なしに言うが、飢えや病気が蔓延していて悲惨さに言葉が見つからない」」と、苦しい胸の内を語ってくれました。

JVCは今後も停戦に向けた提言活動を続けるとともに、緊急支援活動を全力で実施していきます。ぜひ今後もガザの人々に思いを寄せていただけますよう、お願いいたします。