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洪水被害を受けた方々への多面的農業支援(シードシェア)
Jun 29, 2024
【農業支援に参加したザヒダさんからの手紙】
私の名前はザヒダです。3人の子どもと夫、そして私の5人でカルホロ村に住んでいます。洪水の前は、作物を育て、家畜を飼って比較的良い生活を送っていましたが、洪水は、収穫目前の作物や家畜、僅かばかりの貯えの作物とともに家も流し去ってしまいました。村ではインフラが破壊され、子どもたちは学校に通えなくなり、多くの人が避難を余儀なくされました。即座に食糧に困り、農業の再建には目途が立ちませんでした。本当に何もかもなくしてしまったのです。
大洪水時の様子
ある日絶望の中、私にチャンスが訪れました。ジェンの農業支援の参加者に選ばれたのです。私は家族のために、自分自身のために一生懸命農業の技術を学び、農作物を作りました。するとJENは、私の農業に対する学ぶ姿勢と献身を評価して、最優秀農家として表彰してくれました。この表彰で、私は誇りを取り戻しました。まじめな努力が認めてもらえるということは、私の自信も高めましたが、地域の他の農家の人たちにも良い影響を与えました。みんなが最優秀農家を目指すようになったのです。
ザヒダさん・最優秀農家賞の盾と共に
この農業支援プロジェクトに参加できたことを、とても感謝しています。私は、この支援がなければ種やその他の栽培資材を買えず、農業を再開することはできませんでした。これから私たちはこのプロジェクトで学んだ知識を活かして自分たちの力で種を育てて収穫し、それを他の二軒の農家と分かち合う予定です。きっと彼らも私の様に熱心に農業に取り組んで収穫をあげるでしょう。私自身は、もっと農業の知識を身につけたいです。ですから、可能であれば、今後も農業分野における最新の技術や知識を学べるようお願いいたします。
からし菜が育つザヒダさんの畑の様子
【JEN現地スタッフ ケサルさんからのメッセージ】
一食平和基金と合同で、「洪水被災者支援事業」を実施しているパキスタン、イスラマバード事務所のケサルです。
一食平和基金に支えられてこの事業も実施できること、心から感謝申し上げます。
パキスタンダドゥ郡で実施している洪水の被害を受けた方々への農業支援事業は、リーダー農家が種と技術などの提供を受けて自ら作物を栽培し、収穫した農作物の中から自身が受け取った量と同じ量の種を次の二軒の農家に無償で提供(シードシェア)して、その栽培方法を伝授するものです。リーダー農家から種を受け取った農家も、最初のリーダー農家と共に、毎年、収穫の中から自身が受け取った量と同じ量の種を次の二軒の農家に無償で提供し、農業のノウハウを伝えながら仲間を増やしていく、持続可能な被災者支援です。
<質の高い種・土地に合った作物の種を吟味して選んでいます>
最初に配布する種は、パキスタンの農業試験所や大学の研究機関などで大切に生産されている『証明書付きの種』を使用しています。これらの種はパキスタン国内の在来種で、農地や気候にも合っていて収穫量が多く、且つ、数世代にわたって再生産できる力強さを持っています。からし菜の種からは油を搾るのですが、この際に採れる油の質が高く、搾油の際の触媒も不要であるなど、様々な利点もあります。
洪水によってすべてを失い、日々の食糧にも事欠いて借金をして暮らしていた人々のために、この地域でよく食される小麦、大麦、からし菜などを選び、収穫したものを人々が食べられるように工夫しています。また、何とか生き残った、もしくは新たに入手した僅かな頭数の家畜を育てている農家が多いので、家畜のえさとなる作物の種も配布しましたが、特に水に強い品種で洪水にも耐えられる種類を選んでいます。
<減災対策・環境への配慮も重視しています>
この事業では、種と共に最低限の肥料、殺虫剤、種の保存袋なども配付しました。種の保存袋は、万一再び洪水が起きてしまった場合に備えた保存方法と共に、殺虫剤は、人体や環境に徹底的に配慮した使い方の研修と共に配布しています。
<持続可能性を高めるシードシェア(種の共有)>
ジェンの自立支援では、リーダーとコミュニティと地元行政のエンパワーメントを重視しています。この三者のどれが欠けても、激甚災害で経済的な打撃を受けている地域での持続可能な自立は困難だからです。農業の知識や経験を持ち、新たな農法や洪水に対処する方法を取り入れ、他の農家を支えることに意欲的な方に「リーダー農家」になっていただきました。ジェンの事業が終了した後でも地域の人びとの農業を支えられる実力を更なる研修で磨き、実際にサポートを始めておいでです。リーダー農家は、年々増やしていく計画です。
種の無償提供を受けた農家の皆さんは、自らの収穫の中から二軒の農家に種を無償提供することで、活動に参加していきます。シードシェアで他の農家の役に立つ経験を経て、コミュニティ全体が互いに助け合い、農業の知識や技術を向上させ、自立していける基盤を作っていくことを目指しています。同時に、被災して本来の能力を発揮できていなかった地元の農業局の巻き込みも図り、後戻りのない持続可能な自立を目指しています。
2024年5月には、配布後初めての小麦が収穫できたという嬉しい報告も届きました。引き続き、ジェンの活動を楽しみに見守ってくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。