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「日本のみなさん、こんにちは」 サブリーンさんからの手紙
Jul 29, 2025
2017年からJIM-NETの一員として、小児がんの子どもたちと関わっています。私自身が病気で入院した時にJIM-NETの活動と出会い、院内学級で過ごした時間が今の私の原点です。子どもたちとの日々は温かく尊いものですが、突然のお別れも多く、心が折れそうになることもあります。昨日まで一緒に遊んでいた子が、朝にはもういない。そんな経験を、何度もしてきました。正直、「つらい、もう戻れない」と思う日もあります。それでもここに戻ってくるのは、子どもたちの笑顔が私を呼んでくれるから。
忘れられないのは、長い治療を経てとても重い病気を乗り越えたジュリーちゃん。最初は人見知りでしたが、少しずつ話せるようになり、ごはんも食べられるようになって、「サブリーンがいない病院には行きたくない」なんて言ってくれて…嬉しかったですね。当時12歳だったジュリーちゃんは今では14歳、元気に成長しています。
プレイルームは、子どもたちにとって治療とは違う、“生きる力”をもらえる場所。そんな場所を守っていけるのは、応援してくださる皆さまのおかげです。
これからも、子どもたちの笑顔のそばで、一日一日を大切に歩んでいきたいと思っています。

サブリーンさん
<事業紹介>
一食平和基金の支援を受け、バスラ事業を実施した現地代表の斉藤です。本事業は、イラク南部バスラに位置する小児専門病院「バスラ子ども病院」において、小児がん患者とその家族を対象に、医療費・交通費支援、心理社会的ケア、医薬品提供を実施することを目的として実施しました。バスラは過去の戦争により劣化ウラン弾や化学兵器の影響を強く受けた地域とされ、小児がんや白血病の発症率が特に高い地域です。
2024年度の活動では、現地の小児がん専門医と連携し、通常の抗がん剤に加えてアレルギー対応の高価なPEG asparaginase(60vial)を含む14,100USD分の医薬品を病院に提供しました。病院側で調達が難しい医薬品を支援することで、治療の継続をすることができました。また、貧困患者とその家族に対しては、病院までの交通費や医薬品購入支援として167名に対し計9,600USDの支援を実施しました。
心理社会的支援では、がん経験者を含む2名のスタッフが、院内学級において遊び・学習支援を実施し、のべ1,976名の患者と家族に対応しました。

院内学級の様子①
アラビア語や数学の授業のほか、音楽や絵画、デザイン専門家と連携したお絵かきワークショップも行われ、子どもたちに学びと癒しの場を提供しました。まだ小さく自分の気持ちをうまく言語化できない子ども達にとっては、アートを通じることで自分の気持ちを表現することができる貴重な場となります。保護者に対しては、がんに関する正しい知識の提供や、治癒した子どもの家族の体験談を通じたカウンセリングも実施しました。がんがどんな病気なのかといった基本的な情報はもちろんのこと、自分の子どもが病気になったことでつらく、苦しい気持ちを抱く保護者の方々にサバイバーの体験談を伝えることによって、彼らをエンパワメントしています。

院内学級の様子②
さらに、誕生日会、スポーツ観戦、博物館訪問などのイベントを年4回実施し、治療中の子どもたちにとって楽しみを提供する機会を作りました。通院・入院歴が長く、あまり学校に通えていない子ども達のなかには、同世代の子どもとコミュニケーションをとることが難しい子もいます。そういった子たちが、信頼できる大人のスタッフのもとで他の子どもたちとアクティビティを経験することは、彼らが将来学校や同世代のコミュニティに戻るときの助けになります。病院は痛いだけの場所、という認識から、優しいスタッフに遊んでもらえる場所になることは、子ども達が病院に行く動機付けともなり、安定した治療の継続に繋がっています。
今後は、心理社会的支援の質を向上させるため、専門性を持ったアルビルのスタッフを中心に、バスラ現地スタッフの能力強化を図り、支援体制の充実を目指します。2025年度も支援を継続予定であり、行政や他NGOとの連携も視野に入れながら、地域全体の医療支援体制強化を目指す方針です。