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2022年、ミャンマーにおける国連WFPの食料支援活動ご報告
Mar 15, 2023
一食平和基金のご支援を受け「ミャンマー学校給食事業」を実施する、WFP国連世界食糧計画の公式支援窓口である認定NPO法人・国連WFP協会で、法人様ご支援・連携の担当をしております松本聡子と申します。
一食平和基金の皆様からの継続的なご支援に、心より感謝申し上げます。
この度は、昨年2022年度のミャンマーにおける活動につきまして、学校給食支援を中心にご報告いたします。
ミャンマーでは、2021年の軍事政権発足以降、国内の状況に改善は見られません。基本的な食料品の市場価格が前年より60%近く上昇し、また武力衝突や経済破綻もあいまって、人口の4分の1にあたる1,320万人が食料不足に陥っています。5歳未満の子どもの3分の1近くは発育阻害(年齢に対し低身長)です。
そのようななか国連WFPは皆様のご支援のおかげで活動を継続し、昨年は270万人以上の人びとに支援を届けました。うち多くは最大都市ヤンゴン近辺に住む貧困層の人びとで、緊急支援に加え、栄養支援や学校給食支援、自立支援を実施しました。また、武力衝突の影響で避難を強いられている人びとへの支援も行われています。
学校給食支援の現場も、引き続き課題が山積しています。拡大する武力衝突、多くの国民が避難民となって故郷を離れたこと、長引く新型コロナウイルスの影響、そして国中に広がる不安などの様々な要因が組み合わさって、子どもたちが学校に行くことが困難となっているのです。また、再び開校することができない学校もあります。国連WFPの職員も、武力衝突が頻発している地域や、治安上のリスクがある地域へ入る際は細心の注意を払う必要があり、支援先の学校であっても、写真やビデオの撮影が困難なケースもありました。それでも国連WFPは学校給食支援を通じて子どもたちをサポートしました。給食の内容は、栄養強化ビスケット、学校で調理した給食、そして食料購入のための現金で、地域や状況などによって最適な形での支援を実施しました。
上記のような状況のなかですが、現地の国連WFP職員より、学校給食の現場のレポートが届きましたのでお届けします。職員が訪れたのは、ミャンマー北部のインド国境沿いに位置する「ナガランド」という地域です。ナガランドは山に囲まれており、ナガ族の人びとが先住民の生活を続けています。遠隔地のため孤立しており、国内でも貧困率が最も高く、深刻な食料不足と栄養失調に直面しています。また、海外からの援助が少なく、市民社会組織の数も少ない場所の一つです。
国連WFPはナガランドで2017年から活動を始め、学校給食支援、母子栄養支援、自立支援などを実施しています。ナガランドのカイヤイという村では、国連WFPが村の小学校の昼食に暖かい食事を提供しており、子どもたちが定期的に学校に通う動機付けにもなっています。
学校の校長先生によると、「この村では、親が子どもに十分な食事を与えることが困難な状況で、まともな食事はおろか、ご飯一杯を食べさせるために借金までしている親もいます」とのことです。しかし、「国連WFPが学校給食の支援を始めたことで、生徒たちが規則正しく授業を受けることができ、健康になっていくのがわかります」と先生は言いました。
カイヤイ村では、学校給食は子どもたちにとって単なる追加の食事ではありません。多くの子どもたちにとって、給食は唯一の栄養のある食事なのです。親にとっても、給食があれば、子どもたちに授業を休ませたり、食料購入の臨時収入を得るために働いたりする必要がなくなります。また学校給食は、退学率を大幅に減少させています。
10歳のマング・ボーくんは、ナガランドに住む7人家族の長男です。一家は農業に頼って生活しています。米やトウモロコシ、タピオカなどを栽培していますが、農場をネズミに頻繁に荒らされてきました。農業に加えて、父親は狩猟や漁業で肉や魚を得ています。家族は収入を得るどころか、家族で消費するのがやっとです。「家での食事は通常2回だけで、特に雨季は、ほとんどがトウモロコシや乾燥したタピオカのみです。学校では肉や魚が食べられるので、給食が好きです」とマング・ボーくんは教えてくれました。
国連WFPはこのような学校給食支援をはじめ、人びとの生計向上のための支援や、地域の土地や道路の開発支援等を通じて、ナガランド全体の食料確保やレジリエンスを高めることを目指しています。
国連WFPでは、ミャンマーの人びとへの人道支援を継続し、状況の悪化を防ぐためにも、今年も支援を継続してまいります。
ぜひ皆さまの継続的なお気持ち、ご支援を頂戴できますと幸いです。