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トルコ・シリア地震、緊急支援活動のご報告

Jul 22, 2023

一食平和基金のご支援を受け「トルコ・シリア地震 緊急支援」を実施いたしました、WFP国連世界食糧計画の公式支援窓口である認定NPO法人・国連WFP協会で、法人様ご支援・連携の担当をしております松本聡子と申します。
一食平和基金の皆様からはいつも温かいご支援をいただき誠にありがとうございます。また、2月に発生したトルコ・シリア地震に際しては、多大なご支援をいただきまして、心より感謝申し上げます。
この度は、同トルコ・シリア地震に対し国連WFPが実施しました支援活動や、現地からの声をお届けいたします。

 

命を繋ぐ国連WFPの支援
「地震が起きたとき、私は子どもたちと一緒に急いで階段を下りて道路に出ました。恐怖で靴を履くのも忘れました。通りは人でいっぱいでした。私たちの建物の破壊は甚大でした。人びとはそれが裁きの日の到来だと言っていました。」
シリア北部・アレッポに暮らす3人の子の母親、グフランさんの言葉です。
「子どもたちへの心理的影響は深刻です。地震のトラウマから、ちょっとしたことでも突然『地震だ、ママ!』と叫ぶこともあります。しかし、親を失った乳児たちなど、もっと悲惨な状況もあり私は心を痛めています。」とグフランさんは語ります。
国連WFPは、グフランさんたちに食料支援を行っています。
「私たちのように仕事がない避難民にとって、国連WFPの支援は命綱です」とグフランさんは言います。

2月6日未明、トルコ南部からシリア北部にかけての国境沿いで大地震が発生しました。地震により、5万5千人が亡くなり、150万人以上が家を失い、(4月11日時点)、さらに物価高騰が追い打ちをかける中、多くの人が苦しい生活を送っています。シリア北部の地震被災者にとっては、12年以上にわたる紛争の末に、新たな不幸が重なったことになります。

元々現地で紛争被災者のための支援活動を行っていた国連WFPは、地震直後より緊急食料支援を開始し、地震の影響に翻弄されながらも、人道支援活動を遂行するためマラソンのような勤務を続けました。
国連WFPシリア事務所のネクヴァ・バイクシュ物流担当官はシリア北部での活動を担当していますが、自身も、家族、幼なじみ、そして自宅を地震で失い、さらに、上司の物流担当部長であり、夫でもあったレベント・クカスランさんを失いました。それでも彼女は、「両国にいる兄弟姉妹を支援する必要があると感じています」と言い、歩み続けています。

 

国連WFPの被災地支援、そしてシリア・支援削減の苦難
トルコで国連WFPの支援を受けたのは、南部・被災地に居住していたトルコ人やシリアからの難民です。またシリアでは、首都アレッポ等の政府支配地域と、北西部の反体制派支配地域、両方のシリア人に国連WFPは支援を届けました。

2月6日時点に両国で支援した人の数は6,500人、2日後の2月8日には10倍近くの6万4,000人となり、その後日を追うごとに支援者数は増加し、4月11日時点で、370万人にのぼりました。
国連WFPが提供したのは、サンドイッチなどのすぐに食べられる食料に加え、栄養強化されたデーツバーといった栄養補助食品、さらに炊き出し等の温かい食事です。また、一家族数日分の食料セットも配布されました。さらに、小売店などが再開し始めた地域では、食料購入のための現金支援も開始しました。

©Ghazwan Jabasini
シリア・ラタキアのモスクでは、温かい食事やサンドウィッチの提供が国連WFPのパートナー団体との協力のもと行われました。
(2023年2月12日)


©WFP/Giulio d’Adamo
国連WFPの移動式キッチンの前で、温かい食事(豆スープと野菜入りご飯)の受け取りを待つ人々。(2023年3月9日)

なお、国連WFPは特に緊急時、輸送や物流といったロジスティックスおよび情報通信の分野において人道支援機関の中でリーダーの役割を担っており、この度の地震に際しても、輸送通信支援を実施しました。震災直後は、トルコからシリア北西部へのアクセスが課題となっていましたが、徐々に改善され、3月13日時点で338台のトラックがトルコからシリア北西部に入り、食料をはじめとした支援物資を届けました。

国連WFPの支援は4月以降も続きましたが、トルコでは緊急支援は5月末で終了し、以降は生活再建に向けた自立支援に移行しています。またシリアでは地震の緊急支援は、地震前から実施されていた国の緊急支援プロジェクトの中に組み込まれ、今年いっぱい続けられる予定です。そのうち約80万人が地震の被災者です。しかしシリアでは、食料や燃料の価格高騰による資金不足により、7月から全支援対象者550万人に提供していた食料や現金支援を、300万人に削減せざるを得なくなりました。この措置は、すでに通常の半分の配給でかろうじて生活している人びとに深刻な影響を与えることになります。

この度の皆さまの温かいご支援に心より御礼申し上げますとともに、どうか引き続きシリアをはじめとした地震被災者の方々に、お心寄せをいただけますと幸いです。

©WFP/Giulio d’Adamo
上記写真の最後尾にいた女性・シェイマさん(28歳)。テントの中で、子どもたちと温かい食事を楽しんでいます