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イラク、明日につながる命のために

Dec 12, 2021

2018年から一食平和基金の支援を受け、「イラク、モスル、イブン・アル=アシール病院で小児がん治療事業を実施しているJCF/日本チェルノブイリ連帯基金です。

2003年のイラク戦争後、相次ぐテロによって、イラクの医療環境は壊滅的になりました。特に第二の都市モスルは、2014年からイスラム国の侵攻により、医療機関は深刻な打激を受けました。20177月には、解放されたものの、街は瓦礫と化しました。

イスラム国から、脅迫され続けたリカァ・アルカザイル医師が、JICA事業で、小児がんの中堅医師として、長野県松本市にある信州大学医学部小児科に留学していた経緯から松本に避難してきたのは、20147月でした。しかし、モスルに残って子ども達の治療を続けている同僚達がいる。解放後も避難した近隣の地域から、モスルに戻り、病院のスタッフ達が自ら床を張り、壁を塗り直して、復興を目指した。リカァ先生は、連日送られてくるイラクの状況を日本の皆さんに知っていただき、小児がんの子ども達を救いたいと願っていた。

リカァ先生が、松本に来るきっかけは、JCF1991年から、チェルノブイリ原発事故で最も被害を受けたベラルーシへの医療支援を行っていたからだった。放射性物質による健康への影響、もしかしたら、イラクの小児がんは、重なる戦争で使われた劣化ウラン弾が影響するかもしれないと懸念されていた。

まず、20186月、モスルからナシュワン病院長とクルド自治区の中央血液銀行のフーナル先生の短期招聘研修から始まった。お二人の医師は、日本の小児血液ユニット、完全なオートマテックで動いている血液検査室の様子を見て、強い印象を持たれたようだった。院内学級も見学し、子ども達に希望を与える院内学級を将来、モスルにも作りたい、と答えていました。しかし、あまりにも日本とイラクでは、医療設備が違います。私たちは、信頼関係を築きながら、一歩一歩イラク小児がんプロジェクトを進めてきました。

長野県立こども病院検査室視察

2019年、モスルの10人の小児がん専門看護師が、イラク、バグダードの小児福祉教育病院で研修を受けました。研修後は①チームケアの重要性を認識した。②医師の仕事、患者のニーズに対する理解が生まれた。③感染症対策に成果が上がった。等うれしい報告をいただきました。

更に、一食平和基金の支援は、グレードアップしていきました。イブン・アル=アシール病院では、麻酔器がなく、骨髄検査や脳脊髄液検査を受ける子ども達は、あまりの痛さに泣き続けていたそうです。子ども達は痛みのトラウマにとらわれ、検査のために病院に来なくなる事もあった、と聞きました。麻酔器は、「全身麻酔をして骨髄の検査をするのは、初めてです」と医師達の喜びの声と共に、患者家族から「麻酔によって苦痛を感じずに検査していただきました」と安堵の声を聞いた時は、病気と闘っている子ども達、家族、病院のスタッフ達と共にうれしいものでした。

  骨髄穿刺を受ける様子


検査を受けた男の子

 皆さまのおかげで、「一食平和基金プロジェクト」は進化を重ねています。ありがとうございます。今年度は、昨年外務省からのNGO連携無償資金の補助を受け、血液診断のフローサイトメトリーを設置しました。がん化した白血球の表層を調べて、より適格な治療に結びつけるための検査機器です。日本では、40年以上前から使われていました。機器も高い物ですが、試薬マーカーが必要です。病院のハーリド先生は、1月~11月までに60人の子ども達の検査をしました。また、ワークショップを開いて、病院スタッフにフローサイトメトリーを使った小児がん診断について説明しています。この検査方法を定着させることによって、骨髄移植への道しるべが見えてきた、と語っています。一食平和基金の支援を受け、これから、1年間の検査が補償されました。私たちJCFも頑張るイラクの医療関係者を応援するために、イラク支援キャンペーンを開始します。

コロナ禍で現地に渡航することができません。しかし、リカァ先生は、毎晩、ハーリド先生とFacebookで話し合っています。医療支援にとって一番大切なフォローアップを日常的にできる体制をとっています。困難な時ほど、人と人とのつながりをうれしく感じ、ありがたく思います

皆さまからの応援に感謝します。