教育・人材育成 Education and Human Development

仏教研究復興支援事業

カンボジア仏教研究所

カンボジア・プノンペンにあるカンボジア仏教研究所は、カンボジアにおける研究機関です。同研究所に保管されていた数万点に及ぶ仏教の貴重な文書や資料は、1975年に始まったポル・ポト政権の文化・宗教の破壊により、目録さえ残っていない状況でした。カンボジアにおける宗教文化の復興・普及に貢献することを目的として、同研究所では日々活動を行っています。主な活動は、仏教復興に向けた人材育成、仏教雑誌「カンプチヤ・ソリヤ」の発刊、文化や宗教の研究です。仏教を国教とするカンボジアにおいて、これらの活動は一度破壊された国の文化や宗教、そして人々の心の拠りどころも再建しています。

背景

紀元前3世紀に仏教が伝わってから、カンボジアでは、国民の9割以上が仏教を信仰しています。1930年にカンボジア仏教研究所が開設されて以来、同研究所では、宗教・文化、歴史に関する研究、資料の収集、保存、出版を行ってきました。

しかし、1975年から1979年にかけて、クメール・ルージュを率いるポル・ポト政権が力を握り、宗教弾圧が行われ、仏教は壊滅的な打撃を受けました。9割の寺院が破壊され、当時、6万人いた僧侶は虐殺や強制労働のほか、強制的な還俗によって3,000人にまで激減したと言われています。同研究所においても、カンボジアの仏教や伝統文化、風習を伝える貴重な書物、資料が失われ、閉鎖に追い込まれました。

しかし、内戦が終わった後は仏教再興の方針が示され、1992年には宗教省の復活が国会で承認、仏教研究所の再建計画が進められました。一食平和基金では、失われた多くの命を偲び、文化的・宗教的財産を取り戻すために、1995年に庭野日敬開祖の「卆寿記念特別事業」として同研究所再建事業を開始し、2002年に建物が完成しました。2016年からは、カンボジアの更なる仏教の復興と発展を願い、「カンボジア仏教研究復興支援事業」を展開しています。

受益者の声

サオム・シアン師(左)

サオム・シアン師(コンポントム州スヴァーイイア寺僧侶 70歳 男性)

仏教研究所の図書はお寺の僧侶の勉学ために大変有難いです。また、このお寺には古い貝葉経や古文書が多く残っていますが、保存が難しいので仏教研究所に技術的な協力をしていただければ大変ありがたいと思います。

ヴァ―・ラニーさん(中央)

ヴァー・ラニーさん(コッコン州宗教局長代理 34歳 女性)

コッコン州はカンボジアの南西の端にあり、タイと国境を接している辺境の州です。仏教寺院は52カ寺、仏教学校は7校ありますが、うち3校は閉鎖中です。お寺には図書館がないので仏教研究所の出版物は本当に貴重です。今後は局内に図書館を設置したいと思います。