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家畜を救うことは、人びとを救うことーパキスタン大洪水の被災地にてー
Dec 12, 2022
一食平和基金のご支援を受け、パキスタンの洪水被災者支援事業を実施している特定非営利活動法人ジェンのパキスタン・アフガニスタン統括責任者のアズマットです。
パキスタンで発生した大洪水は、3,300万人もの人びとが直接被災しました。現状でも被害は大変深刻ですが、被災者の85%が農畜産業に従事しており、農地や農作物、家畜が大きな被害を受けているため、近い将来、更に悪い事態に陥ることが懸念されています。
一食平和基金様のご支援により、ジェンはこれまでも常に、被災されたコミュニティに即座に支援をお届けしてくることができました。今回の災害でも、一食平和基金様はいち早く支援を表明してくださり、ジェンは最も脆弱な立場にある家族に迅速に支援を届けることができました。
私たちはすぐにハイバルパフトゥンハー(KP)州の中でもカブール川沿いにあるチャールサダ郡とノウシェラ郡から調査を始めました。ノウシェラ郡は川のすぐ脇で標高も低いため、氾濫したカブール川の水はすぐに住宅地へと広がりました。上流の氷河から流れるスワート川は、ノウシェラでカブール川と合流するため、ノウシェラに入ると両大河の水量が多くなるのです。(地図をご参照下さい。)
↑拡大図
ノウシェラには、家畜に依存する数千の貧しい家族が暮らしています。
牛、水牛、羊、ヤギは、生活の糧であるだけでなく、人びとにとって家族同然の存在です。彼らの多くは貧しく、動物を失うことは、食料と生計の源、そして家族の一員を失うことを意味します。
様々な村の被災者の方々にお会いした後、政府の畜産局や他の事務所のお話を伺ったところ、全ての部署から、貧しい農家を支援するよう要請がありました。
調査結果を報告すると、一食平和基金運営事務局の皆様はすぐに、貧しい農民のための支援をご提供くださいました。飼料を配布することで、450世帯の食料と生計の源、そして家族の一員を救うことができました。
↑飼料配布後のモニタリングの際の様子
ここからは、ジェン・パキスタンの女性スタッフが、飼料の配布に参加したときの様子をお伝えします。
私はウナイザ・シャヒドです。3ヶ月前からジェンで働いています。現地の農家の方々に会い、配布の補助をするのは初めての経験でした。農家の方々が抱える問題を語るインタビューをテレビで見るのと、実際にその人たちに会い、交流し、話を聞くのとでは、全く違います。
ノウシェラ郡で、飼料を受け取った50歳の男性が語ったお話をご紹介します。
「洪水警報のサイレンとモスクのアナウンスを聞いたとき、私たちはパニックになりました。何を家に残し、何を持っていくべきか、判断するのは大変難しかったです。もちろん子どもたちが最優先なので、妻と上の子には政府が指定した最も安全な場所に行くよう頼みました。乳飲み子のミルクと、妻が持っていたわずかな現金以外は何も持っていけませんでした。私は、小屋につながれている2頭の牛と3頭のヤギに向かって走りました。1頭は妊娠していたので、気をつけなければなりませんでした。動物の縄を解いているうちに、水が家まで来て、小屋の中に入ってきました。速さはそれほどでもなかったので、全ての縄をほどくことができました。外を歩き始めたのですが、動物の速さに合わせなければならず、簡単ではありませんでした。人びとは泣いて、走っていましたが、私は走れませんでした。突然、水位が30センチ上がり、さらに上がっていき、とても恐ろしかったです。一瞬、全ての家畜を置いて、自分の命を守るべきではないかと思いましたが、私の背後で水の中を歩いている人がたくさんいるのが見えました。私は勇気をもらい、立ち止まることなく進み続け、安全な目的地にたどり着きました。実際には1kmしか歩いていないのですが、100kmもあるように感じました。家畜や家族が助かったのはよかったのですが、先が見えず、家や持ち物も心配でした。しかし、善良なイスラム教徒として、神が与えてくれたもの、そしてこの血まみれの洪水の中で守ることができたものに感謝しなければならないと思ったのです。」
洪水被災者にとっての優先順位と課題は、家族と家畜のための食料と避難所です。多くの場合、飼料が不足しているため、家畜は飢えと洪水による伝染病で亡くなっています。一食平和基金様のご支援で飼料を与えられ、命をつなぐことができた家畜たちは、貧しい家庭の生活再建になくてはならない存在です。
家畜たちを救うことができたことは、私にとっても人生を変えるような経験でした。一食平和基金の皆さまのご支援で、本事業を実施することができ、心から感謝申し上げます。引き続き、被災された方々が自立した生活を送ることができるよう現場で微力を尽くさせていただきます。