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満腹で教育を受けられる喜びを子どもたちへ:アフガニスタン・ブレッドプラス(栄養強化パン)事業

Sep 28, 2023

一食平和基金と合同事業を実施している特定非営利活動法人ジェンの池田です。合同事業は、紛争や災害の影響で厳しい暮らしを余儀なくされた人びとが、再び自身の力で暮らすことが出来るよう、その歩みを支えることを目的としています。被災された方がたが心のエネルギーを取り戻し、地域の人びとと支え合いながら、復興を目指せるような支援活動を実施することを大切にしています。

今回は、2022年度に実施したブレッドプラス(Bread+)事業についてご紹介します。
ジェンは、一食平和基金のご支援を受けて世界各地で支援活動を実施しており、アフガニスタンも例外ではありません。アフガニスタンでは、40年も続いた紛争、洪水や地震等の自然災害、長引く干ばつ、2021年8月の政変に起因する経済制裁の影響等から、食糧不安と人道危機が続いています。国連によると2023年は、人口の半数に及ぶ人びとが人道支援を必要とする状況となると言われています。この事業は、地元のベーカリーが製造したブレッドプラスという栄養強化型のパンをナンガルハル県の4地区の小学校で配布するもので、国連世界食糧計画(WFP)と協働しました。子どもたちの栄養状態を改善し、学校への就学率と出席率の向上を図るだけでなく、地元のベーカリーと提携してパンを製造し、衛生管理や経営に関しても学んでもらうことにより、女性を含む地元の雇用を生み出すという一石四鳥の事業です。

ハジ・グルさんは1992年からナンガルハル県ナジヤン地区に住んでいます。井戸の掘削の仕事をして、家族を養っていました。その当時は定期的に仕事に通い、生活は順調でした。8年前、ハジ・グルさんは、仕事中に80メートルの深さの井戸に転落して背骨を折ってしまい、両足が不自由になったため、働くことが出来なくなってしまいました。そこからハジ・グルさん一家の生活には、様々な困難が立ちはだかることになりました。

ハジ・グルさん(中央)とその息子、タウヒードさん(右)とシャリフラさん(左)

ハジ・グルさんの息子、タウヒードさんとシャリフラさんは、シャヒード・ヌール・アフマド小学校の1年生と4年生です。この小学校のラヒムラ先生によると、ナジヤン地区全体の住民の経済状況はとても悪く、家族を養うための日々の食糧を手に入れることさえも困難な状況とのこと。この地区の人びとのほとんどは、2021年の政変前、旧政府関係の仕事に従事していましたが、政変後に職を失い、山から木材を集めて売る、過酷な非正規労働をする、家畜を飼う、農業に従事する(その農業も干ばつで深刻な被害を受けています)等して何とか生活しています。働くことが難しいハジ・グルさんは、子どもたちに十分な食事を与えることが出来ませんでした。ブレッドプラス事業が始まる前の数か月、一家はアフガニスタンで最も一般的な主食である小麦で出来たパンを食べることが出来ておらず、代わりに玄米でしのいでいました。

シャヒード・ヌール・アフマド小学校の生徒たちの前で、ジェンスタッフ(右)とお話するラヒムラ先生(中央)

ジェンは、ナジヤン地区の全小学校を対象に、ブレッドプラスの配布を行いました。タウヒードさんやシャリフラさんのような生徒たちは毎日栄養強化パンを受け取ります。また、シャヒード・ヌール・アフマド小学校の管理職の方や先生方が、タウヒードさんやシャリフラさんを栄養失調の生徒のリストに加えたことで、彼らは欠席した生徒の分のパンも受け取ることが出来るようになりました。ハジ・グルさんは言います。「タウヒードとシャリフラの健康状態に良い変化が見られ、とても嬉しく思っています。彼らは朝早くから目を覚まし、教育を受けられることを喜びながら学校へ通う準備をしています。毎日ブレッドプラスを受け取ることで、健康的に見えるようになりました。」

シャリフラさんは言います。「私は13歳です。父はあの事故で後遺症が残り、私たちの食糧を確保することや生活が困難となってしまいました。この事業が始まる前、私たちは空腹で勉強していましたが、今は満腹で勉強できることに感謝しています。私や弟は、多くの喜びを感じながら学校に通っています。将来、私や弟がきちんと教育を受け、父や家族をあらゆる面で支えたいと思っています。私たちは、将来医者になることを望んでいます。」

一食平和基金によるご支援は、人びとが厳しい暮らしを強いられている地域の子どもたちと家族の未来を支え、希望の光を灯しています。温かいご支援に、心から感謝申し上げます。ジェンは、今後も紛争や災害の影響を受け、厳しい暮らしを余儀なくされた人びとの自立の一歩を支えさせていただくため、微力を尽くしてまいります。