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【JVC事業報告①】自分たちの森は自分たちで守りたい【ラオス】

Jun 14, 2021

みなさんこんにちは!

今回は「日本国際ボランティアセンター」(JVC)さんと合同で実施していた二つのプロジェクトの終了をうけて、ご担当者さんからの事業報告・成果を二つの記事でご紹介いたします!(⌒∇⌒)

まずは、ラオスでの「東南アジアにおける農村再生プロジェクト」についてのご報告です。

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一食平和基金の皆さまと合同で、「東南アジアにおける農村再生プロジェクト(ラオス)」を実施してまいりました日本国際ボランティアセンター(JVC)ラオス現地駐在員の岩田健一郎です。

2017年4月から継続してきた本プロジェクトが20213月に終了を迎えたことを受けまして、皆さまにプロジェクトの内容をご紹介しつつ、その成果をご報告いたします。

 

森でキノコを採集する村人

 豊かな自然の残る東南アジアの内陸国ラオス。ラオスでは多くの人々が農村部で生活し、自給的な暮らしを営んでいます。人々は主食であるコメや野菜などを栽培しながら、森や川でキノコや魚などをとって暮らしを成り立たせています。森からは食材のみならず、建材や薬などを得ることもでき、森や川の自然資源は農村部の人々にとって大切な生活の基盤となっています。

 

 一方、近年ラオスは急速な経済発展をとげてきました。この経済発展は水力発電ダムや鉱山開発、大規模プランテーションなどによって支えられてきましたが、こうした大型開発事業によって不当な土地の収用や自然環境の破壊が引き起こされており、住民に対する補償も十分ではないなど、農村部の暮らしが脅かされています。

活動村均衡の水力発電ダム

 今回のプロジェクトでは、ラオス南部のサワンナケート県アサパントン郡、ピン郡の農村10村を対象として、土地や自然資源に対する村人の権利について理解を深める法律研修に取り組みました。

また、村人が暮らしの基盤である自然資源を持続的に管理していくためのコミュニティー林などの仕組みづくりを支援しました。このように村人の権利と自然資源を守りつつ、生計向上のための農業技術研修をあわせて実施することで、村の暮らしが安定したものとなることを目指しました。

 

 まずプロジェクトを通じて、活動村10村で延べおよそ2,000人の村人に法律研修を実施してきました。研修では、他団体と協力して制作した「法律カレンダー」なども利用しながら、土地問題、環境問題に関わる法律や住民の権利、問題への対処法などを村人にわかりやすく伝えていきました。

「法律カレンダー」を利用した研修

 ラオスではいまだ土地の権利関係を示す証書などが十分に整理されておらず、土地をめぐるトラブルなどが起きています。また、開発事業に伴って土地が収用される場合には、面積などの情報がはっきりしないために、十分な補償が受けられないといった事態も生じています。そこで法律研修において土地の登記をテーマの一つとして取り上げたところ、適正な土地の貸し借りや補償を受けられるよう、土地証書を取得する手続きを行う村人が現れ始めました。

 

 ピン郡の活動村は2019年、2020年に洪水に見舞われ、水田や家財などが大きな損害を受けましたが、この洪水の原因の一つとして、村の上流に建設された水力発電ダムの放水の影響が疑われています。法律研修では開発事業の問題もテーマとして取り上げ、研修を通じて村人は、自らの補償を受ける権利や本来政府や企業が負う補償の義務に関する認識を深めていきました。

本プロジェクトでは、コミュニティー林や魚保護地区といった仕組みの導入にも取り組み、合計6村でこれらの設置をサポートしました。この活動は、森や川の一定範囲を保護区域として設定し、区域内の伐採や土地の利用、漁労などを制限することにより、村人自身で自然資源を持続的に管理していこうとするものです。例えばコミュニティー林の設定にあたっては、はじめに村人とともに対象の森を歩き、GPSで集めたデータをもとに地図を作成します。そして、村の中で規則の内容を話し合って決め、最終的には現地行政の承認を受けます。

コミュニティー林として登録した森


コミュニティー林の設置式典

2019年度にコミュニティー林を設置した活動村は、その周辺にサトウキビのプランテーションがひろがっており、実際に企業から村の土地を利用してサトウキビ畑にしたいとの申し出を受けました。しかし、対象区域がコミュニティー林の一部にあたっていたため村人は申し出に反対し、これを防ぎました。コミュニティー林の仕組みを導入したことによって、村人は大切な森を守ることができたのです。

 

 2020年度にコミュニティー林を設置した活動村の村長は、次のように語ります。「村共有の森では、木材販売や水力発電ダム用の土石の採掘のために、木が切られていました。JVCとともにこの森をコミュニティー林として登録し、伐採禁止などの規則や森の境界を示す看板をつけたので、村の内外の人たちに『伐採してはいけない』ということが伝わりやすくなりました。開発事業などが来ても反対しやすくなり、これからは相手のなすがままにはならないようにします」。

 

 今回のプロジェクトを通じて、村人が主体的に自らの法的権利や自然資源を守ることができるよう、支援してきました。今後、村の安定した暮らしを築いていく上で、法律研修での学びや自然資源管理の仕組みが村人の力になっていくと考えています。

 

長きにわたり皆さまから多大なご支援をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

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東南アジアにおける農村再生プロジェクト