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混乱が続くミャンマーの今

Mar 11, 2021

一食平和基金様と合同で、「ミャンマー読書推進事業」を実施しているシャンティ国際ボランティア会(SVA)の松本です。   今回はこちらのブログで、 軍事クーデターと新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けているミャンマーについて、現地の様子をお伝えします。    本会では2018年からミャンマーの東バゴー地域において移動図書館活動などを含む読書推進事業を、 一食平和基金様と合同で実施しています。   2021年は事業の最終年度ということもあり、現地スタッフも一層張り切って事業を進めていました。      そんな中、皆さまもご存知のとおり、 2021年2月1日に国軍がアウンサンスーチー国家顧問、NLDの政府閣僚等を拘束し、 ミャンマー国家の権力を掌握しました。    ミャンマー市民は軍事クーデターに市民不服従運動(CDM)を展開し、ストライキや大規模かつ平和的な抗議を続けています。    これに対し軍事政権は放水砲、ゴム弾や実弾での発砲、デモ参加者の逮捕、暴行などを行い、 多数のデモ参加者の死傷者が確認されています。     

事業にかかわる人々の今

  幸い、弊会のスタッフは無事で、現在は在宅勤務で業務を行っています。    ですが、状況が刻一刻と悪化しており、自宅付近で発砲音が聞こえたり、 SNSを通じて市民が軍に暴行されている映像を見たりと、日々の緊張感や恐怖から彼らの精神的な負担は蓄積しています。   スタッフの一人は「身体は寝ていても、頭は寝られない」と話していました。    また、弊会はヤンゴンとバゴー地域のピーに事務所を構えていますが、 安全を考慮し、両事務所とも閉め、スタッフも原則、事務所へ出勤しないようにしています。    本事業を共に進めてきた公共図書館の職員とは、クーデター以降連絡が取りづらい状況が続いています。   連絡が取れた職員からは、多くの市民が市民不服従運動に参加しているのと同様に、 公共図書館の職員の中には市民不服従運動へ参加している人もいると聞いています。    そして、子どもたちの様子ですが、新型コロナウイルスの影響により ミャンマー全土の小学校は昨年の6月以降、現在まで休校措置が取られており、自宅での学習を余儀なくされています。   また、ユニセフが3月4日に発表した声明では、多くの子どもたちが軍による武力行使の被害に晒されたり、 家族が暴力を受ける様子を目の当たりにする等、深刻な心理社会的リスクがあると報告されています。   

子どもたちへの支援を止めない

  本事業は東バゴー地域の公共図書館と協力して周辺の小学校に移動図書館活動を行うことで、 子どもたちの読書習慣を普及することを目指しています。   その結果、読書を通じて子どもたちの能力が育まれることを期待しています。  ですので、公共図書館から小学校への移動図書館活動が事業の肝になります。   ですが、上述のとおり小学校の休校措置に加え、公共図書館の職員との連絡が取りづらいことから、 移動図書館活動の実施は難しい状況が続いています。    そんな中でも、 昨年公共図書館と協力し、新たにオンライン移動図書館活動を立ち上げました。   オンライン移動図書館活動とは、 ミャンマーで非常によく利用されているFacebookに、 公共図書館が作成した絵本・紙芝居の読み聞かせ動画をアップロードし、 子どもたちに保護者のスマートフォンなどから見て楽しんでもらう、という活動です。   既に700本以上の読み聞かせ動画がアップロードされています。   学校に行けず日々の不安がつのる毎日に、 少しの時間でも読み聞かせの世界に触れ子どもたちの心が安らいでほしい、という思いで活動しています。      ミャンマーでは国を挙げた教育改革の真っ只中でした。   大規模なカリキュラムの改訂など着々と進められていたところへ 新型コロナウイルスの感染拡大と今回の軍事クーデターが発生しました。   ミャンマーの子どもたちや人々への影響、ミャンマーの将来を考えると、様々な負の感情が溢れ押しつぶされそうになります。   ですが、どのような状況においても子どもたちに希望を届ける、という弊会の思いは変わらず、 そのために何ができるかを考え、ニーズがある限り活動を継続していきたいと思っています。    ミャンマーの多くの人々はこの問題の解決には世界中の人々からの関心が必要であると考え、 ミャンマー語だけでなく英語、外国語での発信も多く行われています。   本記事をご覧いただいている皆さまにも、ぜひ関心を持ち続けていただき、 人に伝えるといった身近なところから行動に移していただけますと幸いです。   それらの積み重ねがミャンマーの人々の大きな支えとなると信じています。